2023年夏アニメ「無職転生Ⅱ」のOPテーマ「spiral」、アニメを見ていなくても物語が連想できてしまうほどの緻密に世界観を作り出している。
無職転生ⅡのOPテーマ「spiral」(LONGMAN)
歌詞、曲から伝わる世界観が緻密で、鳥肌が立つ。
アニメを見ていなくても物語が連想できてしまうほどだと筆者は感じる。
爽やかな冒険の朝の空気に、確実に混じる”後ろ向きなナヨナヨしさ”
朝日が昇り始めるのと共に、目が覚める。
いつも同じ、あの人とのあの時の夢を見ながら。
そんな空気感で曲が始まる。
OPの冒頭シーンは、白い女性とベッドを共にし、手を重ねた瞬間に赤い花びらに代わり、散り、消える。
そして、ルーデウスが目を覚ます。
曲の冒頭は、男声と女声のユニゾンで歌われているが、これは夢の中で見たあの人との重なりを表現しているのだろう。
散る花びらの色は鮮やかな赤。
エリスとのあの日のことが心に深く刻まれ、今もまだ自分の中に渦巻いている。
そして、歌詞からは、割り切れない、はっきりできない後ろ向きな自分の気持ちにまたどんよりしていることが滲み出る。
描いた地図は引き裂いた
https://www.uta-net.com/song/340175/
世界はあの日のまま
僕はまた
誰かのせいにした
嫌になっちゃうな
まさに、負の感情で停滞していた泥沼編でのルーデウスそのものだ。
跳躍する前の屈伸。ぎゅぅーっと力を込める。
Bメロに入り、曲調に変化が出る。
「このままではだめだ。」「変わるんだ、変わるんだ…!」という意識の変化が強く感じ取れる。
このまま何かを待ち続けるフリするの
https://www.uta-net.com/song/340175/
ここから僕はやりなおせますか
まさに、今まさに跳躍しようと屈伸し、力を溜める。
「変わるぞ」という強い気持ちが伝わる。
ここを聴くだけで、泥沼編が終われば、ルーデウスが良い方向に向き始めると確信が持てる。
気持ちの爆発。そして一歩踏み出す。
サビに入り、曲の盛り上がりは一気に頂点に達する。
これまで悶々と屈曲してきた後ろ向きな気持ちがだんだんと晴れていく。
それは、思春期特有の感情の歪みだったのかもしれない。
何がきっかけになったか、何が変わったのかはっきりとは掴めないまま、気づいたら自分は大人になっていて、あの時思い悩んでいたことも、いつの間にか乗り越えていた。
自分の気持ちの整理もついて、着実に、自覚して、一歩、前に進む。
前世から数えて人生2回目にして、ルーデウスとして、人として、きちんとした成長を遂げるのだろう。
どこまでも行ける気がした
あの時の僕はどこだ
きっと大人になったとか
そういうことじゃなくてさあと少しだけの勇気で
変えられた明日はあった
それさえ気づけなかったんだ
そんな日はもうたくさんだいつまでもなんてないんだ
https://www.uta-net.com/song/340175/
終わりゆくその前に
一歩踏み出してみた
受け入れながら
祈りながら
アニメのストーリーを見ていなくても、聴くだけで、そんな展開が脳内に広がる。
そして、一歩一歩進んでいくルーデウスに、自分を照らし合わせて、「がんばるぞ」という気持ちが生まれる。
心が汗を書き、火が灯る。
これからの人間関係
OP映像の中で、「青い鳥」「赤い鳥」「緑の鳥」「白い鳥」が目にとまる。
青い鳥
青い鳥は、ロキシーを表現しているのだろう。
ロキシーも通っていたというラノア魔法大学。
思い返すと、ルーデウスがラノア魔法大学に通いたいと思い、入学費用を稼ごうとしたことがすべての始まりだ。
その道を示した人生の師匠がロキシーだ。
赤い鳥
赤い鳥は、エリスを表現しているのだろう。
ルーデウスが螺旋階段を一段一段登っていき、これまでの人生の景色が絵に収まっていく。
その中を止まっていた赤い鳥がすーっと飛んでいく。
エリスの存在はルーデウスにとっての大切な青春の1ページだということだろうか。
緑の鳥
緑の鳥は、シルフィーだろう。
教室に佇むルーデウスに道標を示すように飛んでいく。
緑の羽根を片手に、何かを見つけ、何かにたどり着いたような表情で、光に手を伸ばす。
シルフィーはルーデウスの側にいて、道を示し、支えてくれる良き友ということだろうか。
白い鳥
最後に星空に飛んでいく白い鳥。
これから出会う新しい誰かなのだろう。
しかし、「白」というのは特徴的な色なので、何か意味が込められてそうだ。
「何色にでもなる=これから出会ういろんな人」ということなのか。
はたまた、白には「純潔・無垢・純真」という意味から、花嫁の純潔さ、純真無垢を象徴する色でもある。
つまり、結婚相手となるような人との出会いを示唆しているのか。
思い返すと、OP映像の冒頭のベッドに寝転ぶ白い女性は、エリスとは全くの別人のような気もする。
OP映像が伏線となっているのだろうか。